ここで紹介します。『口伝 レダと文(ふみ)』は世界に残る歴史書の中でも、誰も残そうとしなかった最後の1冊をネズミがかじりながら暗記し、仲良しの猫に教えた内容がのちのち口伝されたものです。ゆえに事実現実とは到底思えない歴史書です。そのため、皆はこれを「歴珍書」と呼んでいます。 |
世界がまだ真っ暗闇の時間にレダは生まれた。2日目、世界がもうまっ昼間の時間に文(ふみ)は生まれた。ふたりはのち運命の出合いをすることとなる。(それについては『口伝 またたび航海記』をご覧いただきたい。) レダの生まれたバイキング村(この頃はまだポストカードバイキングとは呼ばれていなかった)は代々猫たちがバイキングを生業にしているめづらしい村である。レダももちろん小さい頃より将来の村をになう男猫(おとこ)として育てられた。2歳になると村では一猫前の大猫(おとな)として、海の男として認められる。レダも立派な若猫になるが、最初の航海でいきなり遭難することとなる。(それについては『口伝 またたび航海記』をご覧いただきたい。) 2年後、レダは村に帰る。レダは異国の国ジャポネの船で帰った猫としてバイキングの誉れと今でも称えられている。しかし、この時レダはバイキングの掟をやぶっていた。バイキングの男達には一つだけ海の掟があった。 「ひとつ 航海先の女猫(おなご)に惚れてはならぬ」レダは異国のジャポネーコ文(ふみ)と恋に落ちていた。離ればなれとなってしまった今となっては生涯結ばれることのない悲しい話である…。 レダは満潮満月の夜になると、ひとり浜辺へと出かけていく。しばらくすると、波打ち際に1本の瓶が流れつく。レダはすぐに拾い上げ栓を抜いた。中からは異国ジャポネの文(ふみ)からの手紙が現れた。 「拝啓 レダ様 今日は木こりのお祭りで、金魚すくいをやりました。ついつい興奮してしっぽが太くなってしまいました。おじさんが2匹もサービスしてくれました。大事に家に持ち帰り、お父様と一緒に食べてしまいました。かしこ 文より」 「相変わらずかわいいヤツだ」とレダは心の奥で思うのでした。レダもまた懐から便箋を出すとスラスラと満月の光の下で手紙を書き出した。 「拝啓 文さま 最近お酒を覚えました。悪い友だちが多いので困ってしまいます。でも、安心して下さい。舐める程度ですから。また手紙出します。」ちょっとそっけ無いと思ったレダはネコキャラシールを文末に貼った。手紙は瓶に戻され、レダは力いっぱい沖へ投げた。 月日が過ぎ、レダもバイキングを引退した。レダはまだ独身だったが、もうそんな歳ではなかった。村猫はなぜ英雄のレダが嫁をもらわなっかったのか不思議であった。その理由は彼の死後わかった。レダの家から物凄い数の手紙が見つかったのだ。それはすべて異国のジャポーネ文(ふみ)からのものであった。村猫はバイキングに伝わる海の掟を思い出して泣いた。 以来、この村の男猫(おとこ)たちは残した家族に寂しい思いをさせないために地球上のどんな港に行っても手紙を欠かさず出すようになったという。港港の珍しいポストカードを買って出す猫や、中には郵便局で記念切手を選んで貼る猫もいる。今やこの村の男猫(おとこ)たちはポストカードバイキングとして世界にその名も知られている。 そののち、ジャポネでは異国の手紙を「レダー」と呼び、ポストカードバイキング村ではジャポネの手紙のことを「文(ふみ)」と呼ぶようになったという。 今、ジャポネはジャパンと呼ばれ「文(ふみ)を送る」とはあまり言わなくなったようだが、レダーは「レター」と言われ使われている。 これで『レダと文(ふみ)』のお話は終わりです。「エッ、文(ふみ)はどうなったか?」 それは又、機会があったらお話しましょう。 |
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